臨床研究は計画で決まる~臨床研究デザインの種類と具体例~

臨床研究の具体的な手法のことを、臨床研究デザインと呼びます。

臨床研究を行う上で、計画段階は非常に重要です。誤った研究計画や不適切な研究デザインをもとに集めたデータからは、どんなに優れた統計解析をしても質の高い結果は得られません。また、臨床研究論文を読む際に、臨床研究デザインについて知っておくと非常に役立ちます。

この記事では、臨床研究デザインを3つのポイントをもとに分類し、具体例を交えて解説します。

臨床研究デザインの分類と具体例

臨床研究デザインを、①介入を行うかどうか、②群に分け比較を行うかどうか、③要因とアウトカムの測定をいつ行うか、の3点で分類すると、以下の5つに分類されます。

  1. 記述的研究
  2. 横断研究
  3. コホート研究
  4. ケース・コントロール研究
  5. 非ランダム比較試験・ランダム比較試験

それでは、1~6それぞれの説明と具体的な事例を順番にご紹介します。

1. 記述的研究

記述的研究とは、介入を行わず(①)、かつ比較対照がない(②)研究です。「ある患者にある薬を投与したら症状が改善した」というように、患者の経過を記述して報告します。

向いている研究は、「病気や診療の実態」を調べるものです。

記述的研究のメリットは、介入を行わず、比較対照もないため、比較的短時間で研究計画を作成・実施できるという点です。一方デメリットは、アウトカムを比較するための対照が研究計画の時点で設定されていないため、「要因とアウトカムとの関係」や「治療・予防法の効果」を調べることはできない、という点です。

2. 横断研究

横断研究とは、介入を行わず(①)、比較対照があり(②)、要因とアウトカムを同時に測定する(③)研究です。疾患や障害における評価や介入効果を、ある一時点において測定します。例えば、健康診断時に日頃から運動習慣があるかどうかアンケートを取り、要因「運動習慣の有無」とアウトカム「健康診断時の肥満度」に関連があるかどうか調べる、といったものです。過去の記録を調べたり、将来にわたって調査したりはしません。

向いている研究は、要因とアウトカムとの関連を調べることと、診断法を評価することです。

横断研究のメリットは、時間的・経費的な効率が良いという点、様々な要因を一度に測定できるという点です。一方デメリットは、評価にバイアスが入りやすいという点、要因とアウトカムとの関連は分かるものの、因果関係があるかどうかは分からないという点です。

3. コホート研究

コホート研究とは、介入を行わず(①)、比較対照があり(②)、要因を測定してからアウトカムを測定する(③)研究です。特徴の異なる集団を長期間観察して、集団の特徴の違いから病気の原因を明らかにします。例えば、喫煙習慣のある集団とない集団を追跡し、病気の発症率などを比較すると、喫煙が病気の発症に及ぼす影響を調べることができます。なお、コホートとは集団という意味です。

向いている研究は、要因とアウトカムとの関連を調べることです。治療や予防法の効果を調べることにも使うことができます。

コホート研究のメリットは、要因を先に測定しその後にアウトカムを測定するので、原因と結果の時間的関係が明らかである、ということです。一方デメリットは、アウトカムの発生がまれな場合には多くの対象者を必要とする点、対象者の脱落をなるべく生じさせないために、丹念に追跡するといった工夫が必要である点、そしてこの2点のために多くの時間や費用が掛かる、という点です。

4. ケース・コントロール研究

ケース・コントロール研究とは、介入を行わず(①)、比較対照があり(②)、アウトカムを測定してから要因を測定する(③)研究です。例えば、ある病気に既にかかっている患者(ケース)と、その病気にかかっていないものの、年齢や性別などの特徴が一致する人(コントロール)とを比較し、病気の原因を過去の記録や患者の記憶をもとに調べます。

向いている研究は、要因とアウトカムとの関連を調べることです。

ケース・コントロール研究のメリットは、コホート研究に比べて時間的にも費用面でも効率が良いということです。一方デメリットは、コントロールの選択が非常に難しく選択バイアスが生じる可能性が高い点、要因に関する必要な記録がない場合も多く、対象者に過去の出来事を尋ねる場合には、思い出し方に偏りが生じることもあるという点です。

5. ランダム比較試験と非ランダム比較試験

ランダム比較試験と非ランダム比較試験は、介入を行う(①)研究です。介入群と非介入群を設定し、治療や食事の、有無や程度などを操作して、アウトカムを群間で比較します。ランダム比較試験と非ランダム比較試験の違いは、介入群と非介入群をランダムに分けるかどうかです。

向いている研究は、治療・予防法の効果を調べることです。

ランダム比較試験のメリットは、グループ分けに研究者の主観が入らないため、研究の結果がより信頼性の高いものになるという点です。このため、ランダム比較試験の方が非ランダム化比較試験よりも優れているとされます。

一方、ランダム比較試験のデメリットは、倫理上の理由で実施自体が困難な場合がある(例えば治療を行う・行わないといった介入に関しても、介入群か非介入群かを患者自身が選べない)という点です。

非ランダム化比較試験のメリットは、ランダム化比較試験が非現実的、非倫理的である場合に利用できるという点です。一方、非ランダム化比較試験のデメリットは、研究者が恣意的にグループ分けを行うことで、結果に影響が生じる恐れがある点です。

まとめ

このように、臨床研究デザインを①介入の有無、②比較の有無、③要因とアウトカムの測定タイミング、の3点で分類し、研究デザインそれぞれについて解説しました。

臨床研究を行う際に正しい研究デザインを選択することが、質の高いデータを収集することに繋がります。また、臨床研究論文を読む際にどの研究デザインが使われているか意識することで、論文への理解がより深まります。臨床研究デザインを、臨床研究の実施や理解に役立ててみてはいかがでしょうか。


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参考資料

『研究デザインの選び方』, 小山田隼佑, 医学会新聞, 2019.06.03.
『医学研究初心者のための やっぱりわかりにくい統計道場』, Shingo Hatakeyama, 2016/7/26 改訂.
『コホート研究』, 製薬・医薬業界の転職支援 Answers(アンサーズ) .
『交絡因子』, JAEA.
『介入の意味』, 一般社団法人日本小児アレルギー学会